アキラのランド節 |
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文学した新ユダヤ人? [01/21/2002]ユダヤ系のアイン・ランドのこと調べていたときに、ユダヤ人問題も調べだして、私がほんとうにびっくりしたことがある。私が無知なだけで、これは常識なのかもしれない。みなさん、ご存知でしたか??それは何かといえば、私たちが普通に考えている「ユダヤ人」というのは、聖書に出てくるユダヤ人ではない、つまりイエス・キリストと同じ民族でも人種でもない、その子孫でもない、ということだったのであります。7世紀頃に、コーカサスからカスピ海北岸あたりに、カザール国というけっこう大きな国があったそうで、その国が東ローマ帝国とイスラム帝国にはさまっていたらしい。で、どちらに属するか進退を迫られていたらしい。そのカザールという国の王様が、じゃあ、キリスト教(東ローマ帝国だからギリシア正教か)と、イスラム教の基本である旧約聖書を正典としたユダヤ教に国ごと改宗すればいいんじゃない?というわけで、そうしたんだそうです。そのときからこの国の人間が「ユダヤ人になった」そうなのだ。その後、この国は滅びまして、国民たる「ユダヤ人になったトルコ系白人」がヨーロッパに散ったと。ユダヤ人には十二部族あるとされていたけれども、実は第十三番目の部族があると。それが、このカザール人であると。これは、アーサー・ケストラーという有名な科学者・哲学者(30年代左翼の幻滅を書いた小説家でもあった)が書いた『ユダヤ人とは誰か---第十三支族、カザール王国の謎』(三交社、1990年.原書は1976年:Arthur Koestler, The Thirteenth Tribe:The Khazar Empire and Its Heritage)という本の内容です。この本が、信用できるものなのかどうかわかりません。翻訳者の宇野正美という方は、けっこう「とんでも本」書いているしなあ・・・ユダヤ問題系の「とんでもない眉唾の本」って、多いでしょう。「ユダヤ名誉毀損防止連盟」から抗議されるような種類の本が。でも、別にこの本は、ユダヤ陰謀論とかそういうものではないよ。 しかし、この本の内容が本当ならば、今のパレスチナ居住の正当な権利は、私たちが知っている(白人系)ユダヤ人(アシュケナージ系ユダヤ人というのだそうだ)には、歴史的にないよね。全然ないよね。彼らは、単なる強奪暴力的一気呵成的植民者だよね。どうも、この白人系ユダヤ人は、中東系本家本元ユダヤ人を馬鹿にしているそうです。イスラエルの中でも、階層的にはこの中東系本家本元ユダヤ人は低く置かれているそうです。本来の聖書に出てくるユダヤ人は、もちろん中東人なんだから、今のパレスチナの人々と同じ肌の色で、こういう連中が大量にやってくる前は、宗教は違っても、何とかけっこう共存していたらしい。つまり、世界を彷徨したというか、世界中を股にかけたユダヤ人というのは(あの幕末長崎のグラバーさんとかいう武器商人も)、白人系ユダヤ人で、こういう中東人ではないのですね。どうも、中東系本家本元ユダヤ人はずっと中東にいたり、スペインあたりやアフリカとかに移住したりで、なにも、わざわざ遠くの極東の国にやって来て、そこで内乱をたきつけて、中古武器売りまくって稼ぎまくるような元気はなかったみたいです。だいたいが、東洋系の人間は、世界探検なんて関心ないですから。世界中をうろちょろ探検するなんて、白人の病気だ。 ところで、7世紀あたりといえば、日本ならば大化の改新あたりですから、日本でも半島からの渡来人は畿内に多く住み、朝鮮語と大和言葉をチャンポンに使っていたらし。多分、このふたつの言語も、いまほど隔絶していなかったのかも。私の勤務先は、泉州の弥生式の古代遺跡が多くある地域にあって、「唐国(からくに)」なんて名の町もあります。私は今、その町にいて、これを書いているのだ、むふふ。いかにも、古くから開けたところだったのだろうなあと思わせる匂いが、ここらの土地の空気の中にあります。奈良よりももっと古代的な匂いです。どうせ殺し合いばかりしていたんだろーが、と思わせる京都の禍々しい空気とは、別の大らかな空気です。京都の坂本龍馬の墓もある霊山公園(りょうぜんこうえんと読むのか?)なんて、どこか気色悪いですよ。幕末の志士たちの墓が山全体にまとめてあるんですが、要するに殺害したりされたりの人々ですから血なまぐさい、ろくでもないものを感じます。「気」は明るくないよ、あそこ。なんで、みな京都散策なんてするの。気色悪いわ、私は。10年くらい前に、道間違えてその霊山公園に行ってしまって、ついでだからと、山登って龍馬の墓を見に行った。へ〜〜とぼんやり眺めていたら、やたら目の澄んだ青年から「龍馬先生がお好きですか?どうか蝋燭を手向けて差し上げてください。」と話しかけられて、一本の蝋燭を手渡された。なんだったのか、あの青年は。あの清清しさには、何か危ないものが混じっていたな。何の話だったか?そう、私はべつに本家本元のユダヤ人でもないのに、「パレスチナで威張るな!行き場をなくした白人が東洋人の場所奪って東洋人虐殺しているだけじゃないか、遅れてきた植民地やりやがって、また東洋人苛めやがって、白人というのは、ほんとうに暴力的でろくでもない!」と言いたいわけではありません(ほんとは言いたい)。つまり、7世紀の日本がそうだったように、厳密な日本人なんていない。それから、人種だって、DNAのレベルから言えば、分けるのが無意味らしい。みな誰でも、アフリカのある女性の子孫らしいし、コーカサスとかニグロイドとかモンゴロイドとか分けられない人々のほうが多いのであって、つまりこういう人種というのは近代の捏造(発明?)だと、勤務先の元同僚の方(沖浦和光氏)が話しておられた。だから、人種の民族の正統性を云々したいわけではないのです、私は。 私が感心したのは、このカザール国の人々の末裔たちが、自らを「ユダヤ人」と自己規定して、自分たちの祖先のものでもない旧約聖書を「血ではなくて、観念で理念で把握して」、その選民思想を信じて、「自らをユダヤ人として構築して」生きてきたということです。つまり、思い込みだけで生き残ってきたということです。つまり旧約聖書という妄想、物語を生きたということです。だからこそ、自分たちのアイデンティティを保持して生き残ってこれたらしいということです。これは、すごいことではありませんか?国が滅んで、人間がヨーロッパやロシアに流れて散れば、その先で同化していくものではないでしょうか、普通は。自らの起源など忘れるでしょう。そんなもん、どうでもいいもの。私自身にだって、アイヌの血も大陸の血も南方の血も、はいっていますし、「典型的ウイグル族の顔だ」と言われたことがあるから中央アジアの血も入っているかも。でも、今が幸せならば、なんでもいいよ。しかし、彼らは、旧約聖書を、それによる自己規定を信じて生きた。だからこそ、迫害もされたが、だからこそ生き残った。この人々は、早々と7世紀に出現した人工運命共同体=国民国家だったのかもしれません。その国家が滅びたから、観念の国家を形成したのだろうか。近代以降は、彼らもユダヤ教を捨てていったにしても、ヨーロッパの「ユダヤ系」とは、彼らカザール人の末裔であるのだ。その末裔さんたちの中に、今の世界を動かしている(混乱させている?)超VIPがいることと、この私の感心は別のことです。ロスチャイルド一族は、宮廷ユダヤ人から貴族になってヨーロッパ中に分家して欧州連合の黒幕だそうではありませんか。ロックフェラー一族も、アメリカに移民した白人系ユダヤ人。なんとアイン・ランドはフィリップ・ロスチャイルドの愛人だったとかいう説もある。そうなると、彼女が若くして亡命したのも、ある手引きがあったということになる?まあ、どっちでもいいよ。一人の作家の人物にも、その作品の中にも、玉もあれば石もあるし、ミソもクソもあるから、別にそれはいいのだけれども、ただ、ただ、私は「物語」を信じた人間の強さに、その人間たちが歴史を作ってきたということに、感心いたします。これって、おおざっぱに言えば、物語の勝利、「文学」の勝利なのよね。人間はいい物語信じて、それを生ききることもできるんだ。きちんと「文学する」ことは、生きる糧になる。 それと、嬉しかったなあ〜〜。私はキリスト教の組織は嫌いです。しかし、イエス・キリストという人物が言ったとされることには共感します。キリストという人物と、教会は別物だと思っています。キリストと、血なまぐさいキリスト教の歴史は違う。キリストと「クリスチャン」を同一視しないようにしています。今、ここにキリストがいたら、クリスチャンにはならないと、マーク・トウェインだって書いていた。もちろん宣教師とキリストは別物です。なんか絵画でキリストが白人男性みたいに描かれているのを大量に長時間見てきたせいか、キリストが東洋人だってこと、うっかり忘れてた。そうよ、ヨーロッパ人みたいな野蛮な連中から、あんな思想が生まれるはずない。やはり東洋人なのよね、キリストって。また、勝手に納得しているな。 |