アキラのランド節

インドの教育事情をちょっと聞いた  [12/30/2010]


いよいよ、2010年も終わりに近づいてきました。年賀状は1枚も書いていません。掃除も済んでいません。産土(うぶすな)の川原神社にもお参りしていません。お正月巣篭(すご)もり用食糧買い出しもしていません。高島易断所本部編纂の『平成23年神宮館福宝暦』も、まだ購入していません。大学院の科長から、2012年度文学研究科カリキュラム改革案作成に必要な規定集とか郵送されてきましたが、2012年のことなんか、知りませんがな。2011年のことだけで、頭がウニ状態です。

もう何が何だか、わけがわかりません。今年も、混乱したまま過ぎて行くのね。

23日に大阪から名古屋に帰ってきてから、疲れが出たのか風邪なのか、急に体がゾクゾクと寒くなり脱力しまして、2日間ほど寝込みましたが、この不調は25日のクリスマスの夜に名古屋能楽堂で上演されたハポン劇場制作の『パンク歌舞伎マクベス』を見たら、吹っ飛びました。

『パンク歌舞伎マクベス』つーのは、パンクロックと歌舞伎と日本舞踊と暗黒舞踊とストリーム・ダンスとシェークスピアの合体でございます。いまどき、日本人の作る活力のある舞台になんて、なかなか遭遇できません。不調を押して、観に行って良かった!間違えて、最初は熱田神宮の能楽殿に行ってしまい、丸の内の名古屋能楽堂についたときには、すでに開演後5分が過ぎていましたが、行ってよかった!みなさま、機会があれば、是非ともご覧ください。舞台は、自分の目で見ないとね〜〜♪素晴らしい日本のMacbethです!!

TVも報道するのならば、こういう試みの快挙を報道すればいいのにねえ。しょうもない、エビゾーだかザリガニだかの、飲んで騒いで悪態ついて殴られることしかやることないような類の人相の悪い歌舞伎役者のことなんか、どうでもいいのに。これもノリピー報道と同じで、お粗末な政権の失態隠しだという説もありますが。

さて、本日の、本年最後の「ランド節」は、桃山学院大学の交換留学生のインド人女子学生から聞いた「インド教育事情」の話です。私は、彼女の「アカデミック・アドヴァイザー」というのを、しておりました。ただし、何もアドヴァイスなどしませんでした。単に、いっしょにメシ食って、根ほり葉ほり、インドのことを質問しただけです。

これは、Twitterにも書いたことなのですが、ここでも書いておきましょう。いやあ、上り調子の国というのは違うなあ・・・と感心したので、書いておきましょう。

彼女は、インドのジャダヴァプール大学の芸術(Art)専攻の2年生です。この大学は、カルカタ(今は、そう呼ぶ。カルカッタではない)にありまして、インドの国立大学ベスト5に入る名門校だそうです。

インドには、「中央大学」(Central Universities)と呼ばれる18の国立大学があるそうです。日本で言えば、「旧七帝大」なのかな。その他の大学はほとんどが州立大学だそうです。国立大学は、インド政府が直接に管轄(かんかつ)していて、資金が比較的豊富に供給されているそうです。だから授業料は極めて安い!私立大学も、だんだん増えてきているそうです。

それでも、インドの18歳人口 約2000万人のうち、大学進学者は、まだ 約 40万人ぐらいだそうです。つまり進学率は 2%です。しかし、この進学率もじょじょに上がりつつあるらしい。

ともかく、この女子学生が、いかほどにインドではエリートであるか、おわかりになるでしょう?いかにも怜悧そうな、いかにも優等生的に薄情そうな学生さんです。「薄情」って、私は、褒めているのですよ!ほんとは情なんかないくせに、いかにもいかにもの「優しい人ぶりっこ」をする日本の貧乏くさい馬鹿優等生の真似はしないところが、彼女の清々しいところです。さすが、筋金入り格差社会のインドのエリート大学生です。質問すれば、打てば響くように明解な答えが返ってきます。

彼女は、卒業後は、アイルランドのダブリンにある大学の修士課程でHumanitarian Relationshipを学ぶつもりだそうです。「人道博愛主義的関係」???何、それ?説明されても、よくわかりません。だいたい、私の聴解能力では、インド人の話す英語のかなりが、聞き取れません。

「なんで、アイルランド?カトリックでもないのに。あなたヒンズー教徒でしょ?この前、ビーフステーキ食ってたけど・・・行くならば、ニューヨークとかロンドンなんじゃないの?まあ、なんでもいいけどさ(whatever)、人文系学問なんて、年取ってボケてからでもできるから、趣味でもできることだから、まずは、経済的自立(financial independence)を、早く達成できるようなことを勉強したほうがいいんじゃないの?」と、私は彼女に言いました。

すると、彼女は、なんとかかんとか早口で答えましたが、あいにくと、私の聴解能力では、彼女の話す英語は、やはり聴き取れませんでした。

まあ、いいよね。人間には、時間を無駄にする権利だってあるのだから、余計なお世話ですね。

彼女は一人っ子です。インドの中産階級や上層中産階級には一人っ子家庭が多いそうです。意外です。しかし、インドには、中国のような「一人っ子政策」などありません。にもかかわらず、一人っ子が多い。なぜか?

それは、教育費に、非常に非常に非常に、お金がかかるからです!

ちょっと統計が古いのですが、以下は2007年に発表された世界各国の主要都市における平均月収のデータです。単位は全て日本円換算(為替レート不明)です。このサイトから、パクってきました。出典は『プレジデント』2007年12月号です。

国名都市名平均月収(額面)実質月収(手取り)
日本東京314,600円240,000円
アメリカニューヨーク403,500円280,000円
アメリカロサンゼルス348,400円270,000円
イギリスロンドン360,800円270,000円
フランスパリ277,300円190,000円
ドイツフランクフルト353,700円240,000円
イタリアローマ190,200円140,000円
デンマークコペンハーゲン478,200円270,000円
スイスチューリッヒ465,700円340,000円
ルクセンブルグルクセンブルグ339,500円280,000円
ハンガリーブダペスト80,000円55,000円
ウクライナキエフ39,100円35,000円
オーストラリアシドニー302,200円220,000円
ロシアモスクワ80,000円75,000円
ブラジルモスクワ80,000円75,000円
メキシコメキシコシティ44,400円40,000円
UAEドバイ163,500円160,000円
シンガポールシンガポール129,700円110,000円
タイバンコク32,000円30,000円
韓国ソウル179,500円140,000円
中国香港110,200円95,000円
中国北京35,500円30,000円
中国上海46,200円40,000円
インドムンバイ28,400円25,000円

このデータは、あくまでも月額給与について、です。ボーナスは含まれていません。ボーナス入れたら、日本の月額給与はもう少し多いかもしれません。しかし、日本は、給与が高くても、物価がやたら高いですから、実質的には、実感的には、「使い出」としては、もっともっと低いのではないでしょうか。

高福祉国家のデンマークは、収入は高くても半分は税金で取られるね、とか、さすが2007年当時は飛ぶ鳥落とす勢いで稼ぎまくっていたドバイは、国民から税金という名で収奪しない!とかの、このデータに関する説明は、ここにお任せいたしまして、みなさまに留意していただきたいのは、インドはムンバイ(カリフォルニアのシリコン・バレーにあたるハイテク産業の街)の平均月給手取り額です。

東京が240,000円で、ムンバイ25,000円です。大ざっぱに言えば、日本とインドですと、収入格差は1対10のようです。しかし、これは、インドでは、日本の10分の1の収入で食ってゆける、ということでもありますね。でしょ?

ということは、インドの物価を10倍すれば、日本の物価だと考えていいのではないでしょうか。大ざっぱすぎるか?

現在インドの国立大学に在籍する女性が言うことですから、確かだと思いますが、インドの国立大学(文系ならば3年制)の授業料は、年額3,000ルピーです。これは日本円換算で1,400円です。つまり、日本の物価はインドの10倍だと考えれば、実質的には、これは14,000円です。だから、さっき、インドの国立大学の授業料は、政府からの豊かな資金供与のおかげで、とても安いと言ったでしょう〜〜♪

実は、みなさま、1970年代前半における日本の国立大学の授業料は「年額12,000円」でした。ほんと。同じ時期の、わが母校南山大学の授業料は年額140,000円でした。当時の国立大学と私立大学の授業料は、10倍以上の差があったのですねえ〜〜

それでも、南山大学の授業料は比較的安かったのですよ(今は、知りません)。なんとなれば、あの当時の南山大学の専任スタッフの25パーセントは(外国人の)神父さんでして、神父さんは給与を全額大学に寄付していましたから、人件費がその分だけかからなかったのです。

南山大学は、昔から、合理的というか、外国人の知恵というか、ケチというか。貧乏白人大連合のカトリックの中の、「神言会」(しんげんかい)というドイツの一派が設立した大学なので、ドイツの合理主義とカトリックの清貧志向が重なって、ともかく渋かった!! ドイツ系カトリック系ミッションスクール特有の質実剛健さといえば聞こえはいいですが、要するに、上品な貧乏くささが漂っていた。ははは。

女子トイレ個室に節水用ブザー(女性は用をたすときの音が恥ずかしいので、その音を消すために、やたら水を流しますから、水道費がかかる!だから、押せば水が激しく迸(ほとばし)るような音が出る機械が発明されましたね〜〜って、男性は知らないか)をいち早く取り付けたのは、南山大学です。

学内の建物の壁に落書きした在学生の政治活動家には、速攻で、「壁の破損賠償支払い」を、本人と保証人(親)に内容証明付き郵便で請求したのは、南山大学です。アメリカの属国の、西欧文明の周辺に位置する極東のまだ近代化未満国の学生の政治的信条なんか、どうでもいいという、この合理的現実的ドライな姿勢がいいですね。って、 なんの話か?

要するに、繰り返しますが、今のインドの国立大学の授業料は、年額3,000ルピー(日本円で1,400円)というのは、物価格差を考えると、14,000円と考えていいのであって、これは1970年代の日本の国立大学の授業料と同じようなもんだから、無茶苦茶に荒唐無稽に安い、というようなもんではない、ということを、私は言いたかったのであります。

ただし、貧しかろうが、なんだろうが、成績さえ良ければ国立大学に入学して社会的階層的上昇を果たせるという教育の機会の平等の実現のシンボルであった、かつての日本の国立大学と、現在のインドの国立大学とは、まるっきり事情が違うのであります。

インドでは、どうあがいたって、貧しければ、国立大学の試験に合格できないようです。

なぜならば、国立大学に入学できるのは、私立の幼稚園数年間の費用と、小学校から高校にいたる12年間にわたる私立学校の授業料を支払うことができる親の子どもだけであるからです(もちろん、どんな場合も例外はあるでしょうが)。

インドには、義務教育は一州を除いて、ありません。公立学校は、主として、貧困層向けのチャリティです。ですから、「教育を受ける」ということは、「私立学校に行く」ということを意味するのです。インドの私立小学校入学に際しては試験があります。主に英語の試験です。英語は、幼稚園で学びます。もちろん幼稚園も私立です。幼稚園児のときから、インド人は家庭では地元の言葉(彼女の場合は、ベンガル語)で話し、幼稚園では英語で話すことを学びます。小学校に入ったら、科目は、すべて英語によって教えられますから、幼稚園から英語!

インドの親は、幼稚園から高校にいたるまでの私立学校の授業料を払わなければならない。それだけではありません。インドの親は、子どもに大学進学させたいのならば、家庭教師を、3人から4人雇わなければならないのです!

いい学校に入学しようと思うと、ハンパでない勉強をしなくてはならないのは、どこの国でも同じでしょう。しかし、そのハンパでない勉強は、自分でするようなものではないようです。インドにおいては、大学進学をめざす高校生の「すべて」に、家庭教師が3人や4人は、ついているそうです。

そうでなければ、高校の数学や物理などの理系科目についていけないからだそうです。インドの家庭教師は、高校生が、高校の数学や物理に落ちこぼれないでいるために、雇われるのです。

なぜならば、大学進学希望者は、Big Examと呼ばれる10科目にわたる全国統一大学受験資格テストみたいなものを受けなければならないからです。文科系だから、数学や物理は勉強する必要がない、ということはないのです。

このBig Examは、日本式に数科目の試験が1日にあり、3日くらいで終わるという形式は採らない。1科目試験が終わると、1週間ほど間があいて、それから次の科目の試験があり…という具合に、全科目が終わるのに数カ月かかる。ほんまかいな?

現に、Art専攻の彼女も、高校から帰宅すると、軽く食事して、午後6時から8時まで家庭教師について数学学習、それから、また軽く食事して、午後9時から11時まで物理学習とかいう日々が続いたそうです。家庭教師に教えてもらわないと、高校の数学1(Mathematics Oneと彼女は言った)とか数学2(Mathematics Twoと彼女は言った)のクラスや物理や化学の授業内容についていけないのだそうです。

というわけで、高校時代は、ほんとにハードだったそうです。そうしないと、そのBig Examでいい成績が取れない。Big Examでいい成績取らないと、文科系だろうがなんだろうが、いい大学には入れない。このBig Examの結果がおもわしくなくて、自殺する高校生もいるそうです。あああ・・・

このBig Exam対策に、家庭教師が必需品なのです!

ちなみに、インドの家庭教師は学生がアルバイトですることではありません。「フルタイムの専門職」です。この家庭教師、private tutorというのは、生徒の自宅に出講する場合もあれば、生徒が家庭教師の自宅に行く場合もありますが、ひとりの教師が10人くらいの生徒相手に教えるという日本的な「学習塾」なるものは、インドにはないそうです。

インドでは、朝何時から午後何時までという具合に、就業時間が決まっている教育機関の教師は女性の仕事。客(生徒と、その親)からの要請があれば、夜の11時過ぎてからでも移動して出講できる家庭教師(private tutor)は、男性の仕事。「評判の熱血優秀家庭教師」は、「学校の先生」より、はるかに高収入だそうです!!

一般的に、家庭教師は、家庭教師派遣会社から斡旋(あっせん)されるそうです。インド人は、ちょっと気に入らないと、家庭教師派遣会社に連絡して、どんどん家庭教師を替えてもらいます。気軽に替えてもらいます。だ、そうです。

「評判の熱血優秀家庭教師」の場合は、口コミで噂が広がる。平均的な家庭教師は、1回(休憩込み)2時間のクラスを週に2回、月に8回教えて、だいたい1,500ルピー(Rupees)の謝礼を受け取るそうです。これは、2010年冬の為替レートでは、2,800円です。実質的には、日本で言えば、28,000円ですね〜〜♪

では、生徒の放課後5時あたりから真夜中の1時くらいまで仕事して、つまり、だいたい1日に4人の生徒をこなして、それを週に6日繰り返せば、いくらの収入になるでしょうか?

1科目1回2時間週に2回月に8回の個人教授で、1,500ルピーの謝礼(=2010年冬の為替レートで2,800円=実質28,000円)ならば、4人の生徒を確保できれば、日本円で換算すれば、月額336,000円の収入になります(計算あっているかな?)。な、なんと、平均月額給与25,000円、実質的には250,000円(物価が日本の10パーセントだと仮定できるから)のインドで!

この実質日本円換算336,000円は、税務署に申告なんかしなくてもいいのではない?税務署も、捕捉(ほそく)しようがないのではない?いいなあ。丸儲けだ。

なるほど。なかなかいい職業です。「評判の熱血優秀家庭教師」になれば、収入はもっと増える!

問題は、インドの家庭教師の高収入専門職化ではなく、「高校生の子どもを持つ親は、必ず、3人や4人の家庭教師を子どもにつけなければならない」という状況です。ということは、インドの親の財布からは、毎月、4,500ルピーや6,000ルピーが家庭教師代として、飛んで行くということです。

実質的日本円換算だと、84,000円から112,000円が、毎月、子どもの家庭教師代として飛んでいくのであります・・・・平均月額給与25,000円、実質的には250,000円(物価が日本の10パーセントだと仮定できるから)のインドで!

ああああ・・・これじゃ、子どもは一人・・・にするしかないわけだ。

じゃあ、私立学校の授業料はいくらなの?と、私は、そのインドからの交換留学生女子に質問しました。「知らない。母にメイルで聞いてみる」と彼女。来年2月まで日本にいる予定でしたが、急な用事があり、彼女は先週に帰国したのですが、まだ「インドの私立学校の授業料」についての連絡がありません。まあ、いいけど。どっちみち、安いはずはないよな・・・

ともかく、家庭教師が必要なほどに、インドは、理数系科目が重視されるのであります。小学校から高校までに12年間、毎日毎日、算数や代数や幾何や数学のクラスがあるそうです。英語も、毎日毎日あります。シェークスピアの現代語訳とか読むそうです。

あとは地元の言葉(彼女の場合ならば、ベンガル語)を学ぶクラスがあり、古典舞踊のクラスもあり、理科(科学)や歴史のクラスもあります。「家庭科」というクラスはありません。「伝統舞踊」のクラスはありますが、「調理実習」はありません。料理は、家庭で学ぶものです。もしくはメイドがすることだから、学ぶ必要はない。中流家庭でも、3人や4人のメイドを雇うのが普通ですから。

ともかく、学校のカリキュラムは理系中心。一番人気の進路は、工学部。女子も、どんどんエンジニアリングを目指すそうです。医学部は、あまりに難関で、別格。それは日本も同じだな。

なるほど、マサチューセッツ工科大学は、放置しておくと、合格者はインド人ばかりになるので、インド人受験生にはハンディを与えるとか聞いたことがありますが、これほどの理数系重視の教育体制ならば、さもありなん。

だけど、桃山学院大学に(交換)留学してきた彼女は、Art専攻・・・やはり、人間には、いろいろな好みや適性があるのですよね。

彼女は、インドのエリートの主流の理科系ではなく、Art専攻の文科系ではありますが、2パーセントしか大学に進学しない国の、超難関国立大学を卒業するので、なんのかんのといいましても、食いっぱぐれはないようです。いい職が見つからないときは、しばし、「家庭教師」してもいいし・・・とか口走っていました。小学生の子どもには、英語の家庭教師をつけている家庭が一般的だそうですから。

でも、いい結婚相手を得たいのならば、インドの女性は、親譲りの多額の財産を持つか、経済的自立(financial independence)をしていないと駄目だそうです。なぜならば、ともかく、子どもの教育費にお金がかかるので、まともな男性ならば、ちゃんと稼げる女性でないと結婚したがらないから、だそうです。もし、子どもが二人以上ならば、自分の収入だけでは、子どもを大学進学させることができるだけの教育投資をしてあげることができないのですから、無理もありません。

彼女のお母さんも、ちゃんと御自分のビジネスをしていらっしゃるそうで、経済的に自立しているそうです。中産階級や、上層中産階級の女性は、ほとんどキャリア志向だそうです。家庭と仕事の両立に悩む必要ないものねえ。家事労働や子守は、低賃金で雇える女中さんがやってくれるんだから。

日本で言う、「専業主婦」というのは、上流階級にしかありえないそうです。しかも、その上流階級の奥様でさえ、なんか自分なりのビジネスをしているほうが、カッコいい(cool)そうです。

下層階級の女性は、選択の余地なく、低賃金の単純肉体労働せざるをえないが、家事労働とかの需要があるので、下層階級の男性より就業チャンスは多いそうです。そのあたりの層は、義務教育がないので、学校に行けず、いまだに文盲が多いそうです。

インドの若きエリートは、自己の栄達や、それを支える国の発展、繁栄に関心はあっても、昔のカースト制度の名残(なごり)である超格差社会の是正とかには、関心は全くないようです。そこんとこの偽善のなさが、正直さが、実に気持ちいいですね〜〜♪はい。

「まずは、上位数パーセントンの人間が、ガンガン頑張って脳を鍛えて、インドを工業立国やハイテク立国や医学大国にして、どんどん稼ぐことが先です。貧困の是正や教育を受ける機会の平等の実現は、その後です。これだけの人口がある大国ですから、3億人ぐらいが貧困の中で亡くなっても、どうということはないです。また、いくらでも生まれてきますから。弱い人々は、滅んでいくしかないですし、それを、わざわざ止めるのは、自然淘汰を止めるのと同じで、大きく見たら、良くないですよ。いいんです、いいんです。貧しい人々のことは、マザー・テレサみたいな人に任せておけばいいのです。あの人たちを助けたって、職なんかないんだからさあ。死ぬままにしておいてあげたほうが優しいのになあ。今のこところは、まずは、どんどん国を興(おこ)しましょう!」

とは、彼女は決して口には出しませんでした。しかし、なんか、そんな声にならない声が、いかにもいかにも左脳優位型に見える彼女のまなざしから聞こえたような気がしました。

インドの厳しい大学進学事情や教育熱や学校における理数科目重視の事情を耳にした私は、ひょっとしたら、私を含めた日本人の多くは、脳を鍛えるのを怠り、ラクに走り、いつのまにか、思いがけなく、江戸時代の脳の水準に戻ってしまっているのではないか・・・??などという焦燥(しょうそう)を、感じてしまいました。

ねえ、こういう話を聞くと、なんか闘志がわいてきませんか?うかうか、していられないぞ!って。同じ人類なんだから、日本人だって数学や物理を頑張れるんじゃないかって。語学も、数学も、物理も、化学も、地学も、社会科学も、もっともっと、日本人は勉強しないと、マスゴミ報道に騙され洗脳され操作されるだけの黄色いサルのまんまで終わるから、人類になろうかって・・・

とか何とか書きながら、私がインドに生まれていたら、勉強どころか、ヨガもせずに、ガンジス河のたもとで、熱気を含んだ風に包まれながら、ウニ状態の脳のまんま、ボケ〜〜としているだけだったろう・・・という確信がありますね〜〜♪

はい。今回は、これだけの話です。やはり、今回も長い話でした。すみません。

ところで、さきほど、ロンドン大学のキングズ・カレッジの歴史学部戦争学科の大学院に在学中の桃山学院大学の卒業生からメイルが届きました。寮の舎監さん(?)みたいな人が、毎日、朝になると勝手に部屋のドアを開けて、ズカズカ入って来るのだそうです。そうして、寝ている彼の顔を覗き込むのだそうです。きゃあ〜〜なんで?僕のことが好きなのかな?ちがうわ!

午後3時あたりになると暗くなるロンドンの冬に、うつ病気味になる学生が多くて、特に冬休みに帰郷や帰国をせず寮に残っている学生たちから、よく自殺者が出るのだそうです・・・だから、毎朝、残っている学生さんの生死が確かめられなければならないのだそうです・・・だから、彼は、「こいつ、生きてるんかな〜〜?首つってたりしてないよねえ…眼開けて死んでないよねえ・・・?」と、毎朝、チェックを受けるはめになっているのです。なんだ、それ・・・監獄か?

冗談ではなく、来年のイギリスでは自殺する学生がかなり出るかもしれません。イギリスの国立大学は、年額3000ポンド(2010年冬の為替レートで、日本円換算で43万円)の授業料を来年度から2倍から3倍に値上げするかもしれないとかで、今年の晩秋のロンドンでは、学生デモが凄かった(らしい)。そりゃそうだよな。一挙に3倍に値上がったら、9000ポンド。日本円換算で、129万円。学生ローンで、授業料分のお金を借りることができたとしても、返済額も3倍になるのだから・・・うわあ・・・

急激なる国立大学授業料値上げ案を、これまた唐突に当局が言い出すとは・・・イギリスの財政危機も、ものすっごく深刻のようです。

かつて大英帝国の植民地だったインドでは、国立大学の授業料は、日本円換算で実質14,000円と安く、だからこそ優秀な学生が、ガンガン育成されて、彼らや彼女たちは世界に挑む。一方、イギリスや、アメリカや、そして日本では、大学を卒業したら、授業料に費やされた奨学金の返済の重荷が、若い人々を待ち受けています。うちの学生も、すでにして1年生の時から、卒業後の奨学金の返済のことを心配しています・・・大丈夫だって、今はデフレだけど、いずれハイパーインフレで、借金は目減りするって・・・かなあ?

ともあれ、2010年も、何とか無事に過ごせました。ありがたい。

みなさま、本年も、本ウエッブサイトにお越しくださり、ありがとうございました。良きお年をお迎えください!