アキラのランド節 |
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時給5,000円 [01/18/2011]怒涛の労働の日々です。秋学期の授業が終わったら、学期末試験が始まり、入試が始まり、入試関係が終わったら、いよいよ広島県の福山市立大学への転出に伴って、研究室と、勤務先近くに借りている部屋の引っ越し準備をしなくてはなりません。 去年の秋から、週に2時間、学生さんにアルバイトで研究室に来てもらって、不要書類の廃棄作業をしてもらっています。書類の整理廃棄が終わらないと、本の整理、取捨選択はできません。 しかし、廃棄しても廃棄しても、まだまだ書類はあります。書類によっては、手で破るのではなく、シュレッダーにかけなくてはいけないものもあります。学生さんは、黙々と破り、黙々とシュレッダーにかけ、黙々と不要冊子雑誌の類をひもで縛ってゴミ置き場に持っていってくれます。手を抜かずに、きちんと丁寧にやってくれます。 ここで、「いい学生さんだなあ。やはり、フジモリが日頃の教育活動をさぼっていないからだな」とか、「いい人間関係をフジモリは学生さんと築いてきたな」と思った、あなたは甘い!かなり頭がゆるい。そんな綺麗ごとを思い浮かべるようでは、あなたは、大人ではない。 私は、その学生さんに時給5000円払っています。桃山学院大学の近所のレストランのウエイトレスの時給は、750円です。深夜から夜明けにかけてのガソリンスタンドでのアルバイトの時給が、1000円です。ですから、時給5000円のアルバイトは、法外に条件がいい。だから、学生さんにしてみたら、実につまらん作業でも、きちんとやってくれるのです。無駄口たたかず、やってくれるのです。 私も、時給5000円出しているので、ちゃんと、しっかり彼の仕事ぶりはチェックしています。いい加減なことしたら、他の学生さんに頼むもん。当り前じゃ。 カネがすべてではないです。しかし、カネが問題です。事実は、そうです。 その学生さんは、たとえ時給1000円でも、きちんとやってくれる(であろう)人柄です。でないような類(たぐい)の学生さんには、私は依頼しない。学生によっては、「こんなに時給がいいアルバイトを僕に提供してくれるなんて、フジモリは俺のこと好きなんだな。俺って男前だし」とか、奇想天外荒唐無稽な勘違いして、仕事の仕方が甘ったれたものになりかねません。 下司(げす)で軽薄な奴というのは、18歳くらいで十分に下司で軽薄です。あれは、やはり育った家庭の問題なんだろうか。 私は、気さくな人間ではあるが、なれなれしくされるのは、相手が肉親や親類でも、大嫌いだ。心の中で、「うざいよ、おまえ。サッサと死ね」と言っている。はあ、私は、そういう人間です。 いくら時給が安くとも、引き受けた仕事であるのならば、きちんとやらないと気が済まないから、きちんとやる。たとえ無給でも、きちんとやる。ヴォランティアの御奉仕だろうが、カネになる仕事だろうが、きちんとする。というのが、まっとうな人間です。まっとうな気力や体力や能力のある人間というのは、そういうものであります。 しかし、だからといって、そういう人間の内なる善性、美徳(気概じゃ)につけこんで、その人を利用してはいけないの!便利な道具にしちゃいけないの!そういうのを、「搾取」というの!そういうのが、アイン・ランドの言う「搾取」なの! ちゃんと、人さまの時間とエネルギーを使わせていただいたのならば、現金を渡すの。もしくは金地金かプラチナを渡すの。ははは。この社会で、人間が生きていくのに必要なものは、いろいろあるが、まずは現金なんだからさ。自分自身が欲しくないものなんか、他人に謝礼がわりに、渡さないの。特にうまくもない菓子なんか渡して、誤魔化すんじゃないの。 そこんとこわかっていない、いい年をして幼稚な大人が少なくないよね。 留学希望だけれども、英語の基礎学力が足りないのでTOEFLの点数が伸びない学生さんが少なからずいるので、しかたないから始めた英語補習クラスは、最初は7,8人が集まっていた。けれども、案の上、だんだん減り、最終的に今でも残っているのは3人だ。 この3人は、「ひとりで勉強してると寝ちゃうんだよね〜〜みんなと勉強してると楽しい〜〜」とか言って、関係詞代名詞とか関係副詞の英作文を、3人でキャピキャピ笑い話しながら、黒板にチョークで書いている。 はっきり言って、「ひとりで勉強していると寝ちゃう」人間は、勉強しなくてもすむ仕事に就くしかない。わざわざ大学に入る必要はない。のではあるが、まあ、まだ18歳ならば、そのアホな思い込みが治る可能性はあるので、補習してきました。でも、これも、もうすぐ終わる。後のことは、知りませんがな。 その3名のうちのひとりの女子学生が、アルバイト先のレストランの店長(雇用主だね)について、よく愚痴る。午後10時に閉店で、アルバイトが終わる時間も午後10時の約束なのに、客のいない午後10過ぎに、グチャグチャと店長が雑談(説教&愚痴)を始めて、すぐに帰らせてくれないそうだ。結局、仕事が終わるのは、午後11時になるそうだ。この午後10時から午後11時までは「サーヴィス残業」となり、時給750円は出ない。 こういう馬鹿な大人がいるんだよね、まったく。女の子を、夜の11時に一人で帰宅させるなんてことをして平気でいることができる点において、男としても最低である。 彼女も、「あ、明日小テストがあるんです〜〜毎回あるんですよ〜〜私、どうしても留学したいんで〜〜すみません〜〜帰らせていただきます〜〜お疲れさまでした〜〜♪」とか大声で言って、サッサと帰ればいいのだが、いまどきの学生さんというのは、何でも見境なく、あけすけに、考えもなしに、躊躇(ちゅうちょ)なく、しゃべっているように見えて、実はそうでもない。ほとんどの人間がそうであるように、言うべきことは言わずに、しょうもないおしゃべりをする。気は使うが、頭は使わない。 今は、そのへんのお好み焼き屋の厨房の皿洗いや、小さいレストランのウエイトレスやウエイターのアルバイトだって、そうそう簡単には、学生をアルバイトで雇ってくれない。学生も、アルバイトをしないでは、やってゆけない。高い授業料を親は払ってくれているのだから、携帯電話などの通信料ぐらいは、衣服代ぐらいは、自分で稼がないといけない。下宿生ならば、なおさらだ。ちゃんと家計簿を付けて出費を抑えている。 アルバイトでさえ、学生は、5つか6つの飲食店に履歴書を出す。まず書類審査がある。アルバイトでも面接受けるところまでこぎつけるのに時間がかかる。面接を受けて、やっと採用される。採用されたって、時給750円である。なのに、就業時間過ぎても、店長は、若い可愛い女子大生のアルバイト相手に、しょうもない雑談をしたがり、なかなか帰宅させてくれない。それでも、せっかく見つけたアルバイトだから、我慢する。 私は、先週の金曜日の夕方に、「うちの学生を不当に使う」このしょうもないシェフ兼オーナー店長のレストランを見物に出かけた。私は、大学近辺の飲食店というのは、桃山学院大学の学生をアルバイトで使ってくれている店にしか行かない(といっても、ほとんどの店でうちの学生が働いている)。でも、不覚にも、その店のことは知らなかった。オムライスが自慢だそうだ。そんな噂なんか聞いたことないぞ〜〜 オムライスではなく、そこのコース料理を注文して食った。金曜日の夜だというのに、客席は半分も埋まっていない。私は、何を食ってもうまい!と感じる人間なのではあるが、そのレストランは、レストランとしては、これでは繁盛しないわなあ・・・女の子相手に毎晩愚痴りたくもなるよなあ・・・と納得せざるをえないレヴェルのものであった。 この店長、つまり「就業時間が終わっているアルバイトの女の子に無料で自分のお守りをさせているオッサン」というのは、頭が悪く、無神経で、怠惰である。ついでに、物事の道理というものが、わからない。頭が悪く、無神経であり、怠惰であり、物事の道理というものがわからないので、この競争の激しい時代、外食産業がしのぎを削っている時代に、自分のレストランを、1970年代ならば、そこそこおしゃれであったろうが、今はかなりはずしてんじゃない?という水準のままにしていて平気である。 なんで、もっと勉強しないの?なんで、休日には、ちゃんとあちこちの繁盛しているレストランを食べ歩いてみないの?なんで、アルバイトのウエイトレスの女の子に、アイロンもかけていないような汚れたままの白い上っ張りを着せておいて平気なの?なんで、客が帰ったら、サッサと片づけて掃除して、飲食店情報誌でも読まないの?なんで、新しいメニューでも考えないの?冬の寒い夕方なんだから、客が来る前に、なんで、ダイニングをあらかじめ暖めておかないの? あんたの店が繁盛しないのは、あんたの頭が悪くて、怠惰で、仕事に集中していないからだよ。自業自得だよ。自業自得だけならばいいけれども、アルバイトの女の子に、サーヴィス残業を強いるような真似をして、さらにマイナス点を稼いじゃっているから、余計に、さらに、無駄に運が悪くなるんだよ。 なんで、こんなについてないのか?と愚痴るのはおかしいの。その程度のレストランでもつぶれずに、食ってこれたのだから、不当に恵まれてきたの。感謝しこそすれ、あんたが愚痴る筋合いは、いっさいないの。 このまま、アルバイトの女の子たちに、サーヴィス残業を強いることを無自覚に続けたら、支払うことを怠った分の金額が積もり積もって、さらには倍になって、さらには3乗とか4乗となって、損害として返ってくるぞ〜〜ついでに、大病になるよ。ついでに、子どもがぐれるぞ。引きこもるぞ。ついでに、親は無駄に長生きして、ペットは食われちゃうぞ。トドメは、レストランで食中毒が発生し、破産するぞ。で、台風で先祖代々の墓が倒れるの。それから、ベッドから落ちて、骨折するの。しつこいわ! なんて思いながら、そのレストランを出る時に、その「就業時間が終わっているアルバイトの女の子に無料で自分のお守りをさせているオッサン」である店長さんに、「いつも、うちの学生がお世話になっております。なかなかお役に立つことはないとは思いますが、どうかよろしくお願いいたします」とか言っちゃって、頭を低くして、にこやかにお願いしてきた私。裏表のある私。 この店長さんはさておき、この店長さんを一層に悪質にしたような大人が多いから、この種の大人の下で働く若い人たちが腐るのだろうなあ。若くて真面目な人ほど、世の中に嫌気がさすのだろうなあ。 あげくのはてには、陰ひなたなく働く自分自身を、「俺って、お人好しだな、いいように使われちゃってるな」と恥じてしまうようになるのだろうなあ。きちんと仕事してしまう自分自身を呪うようになって、あえて努力して仕事の手を抜くようになったりして。 でもって、その些細(ささい)な手抜きにより、大事故が発生したりすることもあるのだろうなあ。 でもって、責任者は、「部下の不始末でこんなことになって・・・私自身は何も悪いことしてないのに、なんで、こんなことが私の身に起きるのだろうか…」と、嘆く羽目になるのだろうな。 たとえば、2005年4月25日に、JR西日本の福知山線(JR宝塚線)の塚口駅から尼崎駅間で発生した列車脱線事故が起きたときに、JR西日本の社長さんとかは、そう感じたのだろうなあ。運転士と乗客を合わせて、107名が死亡したあの事故の原因は、まだ年若い運転手さんの不注意のみにされそうになったけれども、当時のJR西日本の勤務体制は、かなりの疲労と消耗を運転手さんに強制するような類のものであったらしいではないですか。 肝心要の運転手さんを疲労消耗させて、その責任と労に報いない会社は、いずれ大損害を蒙(こうむ)るのだよ。末端の労働者の疲労や消耗を考慮しないような労働環境は、回り回って、経営者や幹部の首を絞めるようなことになるのだよ。彼らが、刑事責任を問われたとしても、懲役になったとしても、おかしくないのだよ。 末端の労働者の疲労や消耗を考慮しないような労働環境によって維持されている組織がひねり出す利益から高給を得る立場の人間には、その仕組みについて無自覚だろうが、何だろうが、「責任」があるのだよ。その仕組みの上層にいる人間には、「人さまの労働心労に報いずに、その労働心労によって確保された利益の上前をはねてきたということにおいて、搾取者であり寄生虫である」という自覚があるにせよ、ないにせよ、「責任」があるのだよ。 そーいう責任を果たす気のない人間は、そーいう立場になっちゃいけないの。「部下の不始末でこんなことになって・・・私自身は何も悪いことしてないのに、なんで、こんなことが私の身に起きるのだろうか…」なんて思ったとしたら、アホですわ。アホより、たちが悪い。卑(いや)しいのだよ。卑しいというのは、そーいう精神性のことを言うの。 ついでに、朝早く起きて出勤すればいいものを、ギリギリまで寝ていて、家を飛び出して、JRは遅いだの、私鉄は早いだのと、ささいな時間の短縮をギャアギャア言い立てる類の人間にも罪はあるからね。そーいう客のケチなわがままが、JR西日本の運転手さんを追い詰めたってことも、あるんだからね。 だいたい、何でもかんでも安けりゃいいと、値段が低いことばかりにこだわるような姿勢が、労働者の状況を追い詰めているのかもしれない。正当なコストにふさわしい価格は、ちゃんと支払わないといけないのかもしれない。 まるっきり罪がなくて、責任がない人間なんていないのかもしれない。まるっきり無実の無垢の人間なんて、生まれたての赤ちゃんぐらいなもんかもしれない。 「わが身の不徳のいたすところで・・・」って、便利な日本語表現があるけれども、ほんと、この表現の意味は深い。私が身に受ける災難は、運命じゃない。私の不徳のいたすところ。私に関しては、今までのところ、それは真実だ!!って、何を自慢しとんじゃ。 ああ・・・私の研究室の混乱は、15年間の私のだらしなさの結果です。自分が生じさせた結果を、自分だけで引き受けずに、後始末の一部分を、人さまの時間とエネルギーに委ねるのですから、時給5000円という痛い出費をするのは、当然です。ありがたく支払う私。 ここんところを、時給1000円ですますと、私は不当に人さまを搾取したことになり、いずれ、その罰を受けるのであります。だいたい、この減らない体重も、どこかで犯した私の搾取という罪の結果に違いない。呪いとしか思えない・・・・と言うのは、私の愚かさ。ネット通販で入手した「茨城県特産さつま芋丸干し一袋550円」を3袋も食った報いじゃ!!正当なる報いじゃ!・・・って、何の話か。 一方、時給5000円という高給で仕事する立場の学生さんは、きちんと仕事しないと、不当なる収入を私から得ることになり、私を搾取することになり、その罪の結果を受けることになります。それを危惧する優しい私は、しっかりと彼の仕事ぶりを監督するのであります。ほほほ。 若い非力な人間は、それはそれで、搾取性から逃れていると思ったら、大間違いだ。とうの昔に成人しているくせに、自分の駄目さ加減に居直って、親のカネばかりあてにしている奴は、はっきり搾取者だよ。ろくでもないことになるぞ〜〜お前みたいなバカ息子の嫁になる奴なんかいねーよ。バカ息子にまっとうに厳しく対せないバカ親と、仲良くいっしょに朽ちてゆけ〜〜♪滅んでゆけ〜〜♪アッシャー家の崩壊〜〜♪ あ・・・親戚のうざい奴の顔が、目の前をよぎってしまった。 ところで、私が、なにゆえに、今は旧聞に属するかもしれない、あのJR西日本福知山線列車脱線事故を例に出したのかというと、この大事故が、アイン・ランドの『肩をすくめるアトラス』の中の大鉄道事故のエピソードを、私に連想させたからです。 この大事故のニュースをTVで見たのは、ニューヨークのラ・ガーディア空港の搭乗口ゲート前の待合室でした。2005年の4月に、「アイン・ランド生誕100年記念会議」みたいなもんが、ニューヨークで開催されたので、そこに参加して、帰る途中のことでした。 私は、このエピソードについては、本ウエッブサイトの(開店休業状態の)「アイン・ランド語録」の第15回[09/28/2008]において、「起きたことは、すべてふさわしい」というタイトルで、紹介したことがあります。そこを読んでいただくといいのですが、そんなもん、他のコーナーを開いてクリックして読むのは面倒じゃという方々のために、ここにコピペしておきますね。 (コピペ始め) ★Atlas Shrugged(1957)の中で起きる出来事の中でも、私にとって最も印象が激烈な事件は「タッガート大陸横断鉄道」で起きた一大惨事です。脇坂あゆみさん御翻訳『肩をすくめるアトラス』をお持ちならば、手っ取り早く、すぐに630ページから654ページをお読みください。 ★ヒロインのダグニー・タッガートの祖父(鉄道王エドワード・ハリマンがモデルのようです)が築き上げた「タッガート大陸横断鉄道」が誇る、ワシントンD.C.からサン・フランシスコを結ぶコメット号のディーゼル機関車が、古いレールの亀裂のために、コロラド山中で脱線します。真夜中の零時過ぎのことでした。 ★客車は無事だったのですが、予備のディーゼル機関車を持つ駅から、機関車を運んできて客車に連結すると、目的地のサン・フランシスコに着くのが、最低12時間以上は遅れるという事態になります。 ★ところが、乗客の中に、その日にサン・フランシスコでの演説会を控える高級官僚キップ・チャルマーズがいました。彼は、官僚の世界を昇りつめて政界に打って出ようと、まずはカリフォルニア州から立候補をすることになったのです。不測の事態に備えて一日前にカリフォルニア入りすべきだったのですが、首都でのパーティ出席のために列車に乗るのを、ぐずぐずと遅らせました。彼は、たまたま「女優になる才能がなくスターにしかなれない」愛人や仲間を引き連れて、最終の夜行列車コメットで、酒に酔って息巻いていたのでしたが、そこに脱線事故が発生しました。 ★チャルマーズは鉄道員に列車を出発させることを強要します。予備のディーゼル機関車が近くの駅にないという説明を受けても、承知しません。近くの駅にあるのは、使用されていない古く大きな蒸気機関車だけです。それでは客車を牽引して走ることはおろか、途上にあるトンネルを抜けることもおぼつかないのです。トンネルは劣化して換気装置が機能しないうえに、もともとが噴煙を出す蒸気機関車用には設計されていません。蒸気機関車がトンネルを通過すれば、それが吐き出す煙がトンネル中に充満して、客車の乗客が窒息死することは明らかです。 ★立候補演説会のことしか念頭にないチャルマーズは鉄道員たちを恫喝(どうかつ)します。鉄道員たちを従わせるために当局へ電話をかけ、鉄道会社社長のジム・タッガートに連絡し圧力をかけます。常日頃から判断力がなく卑怯な社長は、チャルマーズの要望に従うよう社員の鉄道員に命じます。危機や緊急の場合に、無能な兄の社長にかわって適切な判断をして会社を救ってきた妹のダグニーは、兄や重役会と対立して会社を辞めた後でした。ジムは今回ばかりは厄介な問題を妹に押し付けることができません。 ★とうとう旧式の蒸気機関車が客車に連結され、列車は走り出します。トンネルは噴煙で塞がれ、ついで大爆破が起きます。同じ路線をコメット号が走っていることを連絡されなかった後続の貨物列車が、トンネルの中で停車したコメット号に激突したからです。その貨物列車は火薬を積んだ軍事用列車でした。トンネル爆発前に乗客全員がすでに窒息死していました。 ★この惨事は、起きるのが当然の事故でした。起きるのが当然のことを回避する当然のことを誰もしなかったのは、なぜか?だいたい、全米一の鉄道会社がなんで劣化したレールを取り替えていなかったのか、換気装置が故障しているトンネルを修理しないですませていたのか、官僚の命令に民間の鉄道員たちは従う義務などないのに、なぜ彼らは命令に従ったのか? ★この小説世界においては、この事故が起きる前に、すでにいくつかの法律が施行されていました。「協同的共生社会」の実現という共通善のために、政府は、発明家や産業家や労働者が努力と頭脳で獲得した利益を国家が管理して「必要に応じて」国民に分配することをめざします。まず、「反競争法」(Anti-Dog-Eat-Dog Rule)を立案し施行しました。 ★次に、「機会均等法」(Equalization of Opportunity Bill)が施行されました。優れた製品やサービスを提供できるがために市場で優位に立つ企業は、他の企業にとって脅威となり、公共の福祉に反するので、すべての会社が、規模に応じて必要な利益が得られるようにするための法律です。これは国営化ではありません。優良企業の利益を無能企業に分けるので、無能企業の無能経営者だけが潤います。 ★さらに、社会の安定のために、労働者や従業員の離職や転職や解雇を禁じる「10ー289号指令」(Directive 10-289)が出されました。労働の自由市場は消えました。どんな悪質な労働者でも解雇すれば違法。職能に秀でた人間をスカウトするのも違法。別の職を求めることも違法。優秀な人材を新たに採用する余地がなくなり、責任を持って職務に従事し成果を出す労働者に報いる手段が消えました。Incentiveが失われた労働現場は荒廃します。 ★「反競争法」により競争を禁じられた企業は企業努力を怠り、良質の商品やサーヴスが提供されなくなりました。無能な企業でも「機会均等法」のおかげで、収入は確保されますから、なお一層に、良質の商品やサーヴスがアメリカから消えていきます。鉄道のレールが劣化しても、レールを提供する鋼鉄会社が鋼鉄を生産しないのです。受注されても納期に間に合うように生産されないのです。良質な鋼鉄を生産でし、納期内に収めることができる会社は、「反競争法」違反により、企業資産を国家から没収されるのです。 ★じょじょに、社会全体が停滞し、社会の機能不全は進行します。物も有能な人材も生産性高い企業もみな消えていきます。人々は混乱し希望を失い疲弊します。そうした情況の中で、この大惨事は起きたのです。 ★そんなアホな法律が議会を通過するはずがない?ロシアの社会主義革命によってブルジョワの立場から困窮生活を強いられたアイン・ランドのトラウマが生んだ馬鹿げたほどに極端な漫画みたいな世界が、『肩をすくめるアトラス』の世界?この小説に関するアマゾンのレヴューのなかに、「冷戦時代ならば意味もあったろうが、いまさら社会主義風刺小説など意味があるのか」という類の否定的評がありました。あなた、この小説は、そんな短いスパンで読まれるべきものではないですよ。 (コピペ終わり) 『肩をすくめるアトラス』の中で描かれた鉄道事故の大惨事は、このような搾取の連鎖の中で、生まれたのでした。この大事故は、自分がやるべきことをしないで、不当なる利益を享受したいだけの「たかり屋」たちに責任があります。 でもって、この爆破し炎上したコメット号に乗っていて、全員死亡した客たちは、その搾取の連鎖を、意図的であれ、無自覚であれ、推進してしまった経歴を持つ人々でした。 このあたりの具体例が知りたい方々は、小説をお読みください。もしくは、「アイン・ランド語録」の第15回[09/28/2008]の私の拙文を、読んでやってください。 まったく、アイン・ランドの作品をきちんと読みもしないのに、アイン・ランドの思想を批判している馬鹿は数知れません。最近では、カレル・ヴァン・ウフォルフレンの『アメリカとともに沈みゆく自由世界』(徳間書店)が、その例だな。 オランダ人かなんか知らないけれど、うさんくさいジャナ―リストなんて、時給750円の学生アルバイトのウエイトレスほどにも、この世の中に役にたたないくせに。 あ、ここで、私は、カレル・ヴァン・ウフォルフレン氏が、どんなアイン・ランド批判をしたかなんて具体例を上げて説明なんかしませんよ。私は、そんな暇じゃないですから。ランド節にいちいち、ああせい、こうせいと注文をメイルに書いてくる人もいますが、無料で読んでいるネットの文章に、いちいち注文してんじゃないよ。そんな要望に応える義務は、私にはないの。 アイン・ランドは搾取を憎んだだけ。ちゃんと人さまの役に立つものを生産して利益を出し、雇用を生み出し、結果的に多くの人々の生活を成立させ、社会を繁栄に導く企業家を賛美しただけ。実にまっとうな健全なセンスじゃないですか。 ほんのささやかな雇用も生み出せない類の、ビンボー知識人の口舌(くぜつ)の徒の売文業者が、アイン・ランドが描いて賛美したカッコいい企業家たちに、嫉妬してんじゃないの。企業家が頑張って、雇用を生み出さないと、あんたの、しょうもない文を買ってくれる消費者がいなくなるよ。 やっぱり、長くなるなあ・・・どうやったら、適度な短さのランド節が書けるのかなあ・・・ |