Ayn Rand Says(アイン・ランド語録)

第4回 続・哲学なき小説は無用  [07/13/2008]


The motive and purpose of my writing is the projection of an ideal man. The portrayal of a moral ideal, as my ultimate literary goal, as an end in itself---to which any didactic, intellectual or philosophical values contained in a novel are only the means. Let me stress this: my purpose is not the philosophical enlightenment of my readers, it is not the beneficial influence which my novels may have on people, it is not the fact that my novels may help a reader’s intellectual development. All these matters are important, but they are secondary considerations, they are merely consequences and effects, not the first causes or prime movers. (“The Goal of My Writing” in The Romantic Manifesto)

(私が書くことの動機と目的は、理想的な人間を表出することである。道徳的な理想を描くことである。私の究極の文学的目標としての、それ自身を目的としての、道徳的理想を描くことである。小説において、どんな教訓的価値観とか知的で哲学的な価値観が表現されているにしても、それは理想的な人間を表出するための手段でしかない。このことは強調させていただきたい。私の目的は、読者を思想的に啓蒙することでは断じてない。小説が人々に与える有益な作用を、私は目的としていない。私の小説が読者の知的成長を手助けする可能性があるという事実が目的でもない。これらのことは重要なことではあるが、考慮するとしても二次的なことである。単に結果であり効果でしかない。一番の原因でもないし、主たる動機でもない)

★前回第3回のコメントにおいて、ランドには、多くの小説家(特に日本の)に欠けているように思える、「自分が思考する、あるべき世界観を提示せざるをえない作家としての自意識」があると書きました。しかし、ランドは、「読者のために」「啓蒙活動として」書いたのではありません。あくまでも、自分自身のためです。自分が出会いたい理想の人間を書くために、思想を探求したのです。

言い換えれば、アイン・ランドは「知的にも情緒的にも道徳的にも自分が理想と思える人間が、一番魅力的に見えるような物語を書きたい!自分が会いたい世界、生きたい世界を描きたい!自分が読みたい物語を書きたい!」と言っているのです。作家として、実に素朴で正直で健康な欲望の持ち主です。

卑近にいえば、要するに、「とびっきりの男前を書きたい!」と言っているのです。異性愛者の女の作家の動機として、この欲望以外に何があるでしょうか?実に正直な人です。ホラー小説の王様Stephen Kingは、自伝のOn Writingの中で、ランドのことを、「文章は下手だけど、正直に書いている」と言及しています。