書評    Almost Monthly Book Review
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■2002年1月に読んだ本から

植田信 『ワシントンの陰謀---誰が日本とアジアの経済を殺したのか』
洋泉社 2002.1.23 215pp. ¥740


私は経済について全く無知である。新聞を読んでも何が何だかわからない。しかし、そんな人間でも、70年代のニクソン・ショックや80年代の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」時代を経て、90年代の景気後退時代を見て、現在に至ると、何か変だなあ?日本人は変わらず同じことしてきたのに、こうなったのは外的条件の変化のせいなのだろうけれど、その外的条件の変化って何かなあ?と疑問は持つ。そんな人間に、この本は、読みやすくわかりやすく、この「外的条件の変化=アメリカに一番都合のいい経済システム(グローバリズム)形成・維持・強化する方針(ワシントン・コンセンサス)のために繰り出されてくる手、によって翻弄されたアジアと日本の経済状況とその苦闘の相」というものを、示してくれる。普通の国民が、知っているようで全然知らない「ブレトンウッズ体制」とか「IMF」とか「世界銀行」とか「プラザ合意」とか「金融ビッグバン」とか「逆プラザ合意」とかの用語説明や因果関係などを丁寧に説明しながら、現在の日本の状況の意味を明らかにしてくれる。期せずして、それは第二次世界大戦後の日本の歩みに関する小史にもなっている。全然わからないことを、じっくりと粘り強く諄々と解き明かしてくれて整理してくれる本というのは、ほんとうにありがたい。それが、「本」ってもんだよね?結論は、「私たちは、あらためて日本経済の短所長所を再検討し、自国経済を建て直すべきなのだ。みずから日本の進むべき道をIMFに提示すべきだ。」(本書215)となる。最後には、読者は「それは日本人が一番苦手なことだ・・」とため息をつくことになるのだが、ともかくこれが現実だ、世界の現実だと知ることは、わけのわからないままに鬱屈・混乱した思いでいるよりはるかにいい。これは、著者というより、出版社の問題かもしれないが、こんないい本に、参考文献や索引がないのは、もったいない。引用文献への言及はもちろん本文にあるが、これだけきちんとした内容には、それなりの処遇がされなくてはならない。しかしなあ・・・帝国って、ほんとうにえげつないね。アメリカ人はいい人っぽいけれど、アメリカって国は・・・罰があたるぞ!!


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