書評    Almost Monthly Book Review
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■2002年4・5月に読んだ本から

ジョセフ・F・スティグリッツ 鈴木主税訳
『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』
徳間書店 2002.5 \1500 


グローバル化・ボーダレス化は歴史の流れだ。今更、鎖国して食ってはいけない。鎖国したい気分はかなりの日本人が持っているとは思うけれども。しかし、西欧基準の近代化にやっと20世紀に乗り出した国々が、西欧と同じ調子とルールでグローバル経済に参入することには無理がある。グローバル&ボーダレスな世界は、相互依存システムでもあるから、各国の政情不安定や済混乱は命取り。だからして、IMFの設立目標は、グローバルな経済の安定だった。なのに、ここに資金提供する(特にアメリカの)金融家の利益が優先されて、アメリカによる世界経済正常化のための援助という名の支配・介入が、さんざんなされてきてしまった。おかげでアジアもアフリカもロシアもひどい思いをした。もちろん日本も。これでは陰謀だと思われるよ。最初からそのつもりだったと思われるよ。

本書は、経済諮問委員会やIMFや世界銀行にいたノーベル経済学賞受賞者が書いた「正当なグローバリズムに帰れ!」という内部告発本。これは、Book Offに売らない。また読むかもしれないから。鈴木さんの訳文はほんとうに読みやすい。翻訳くさくなくて、すっと頭にはいる。しかし、正当なグローバリズムって、要するに「ゆっくりと進行する、優しい穏当な、あまり理不尽でない、真綿でくるむようなアメリカ帝国主義」なのかなあ?まあ、そういうものしか、人類は望めないだろうし、それが現実だろうなあ。ゆっくり進行するうちに、グローバリズム主体のアメリカが内部崩壊するということもあるよね。

アメリカ帝国主義はさておき、帝国があることの良さってものは認めた方がいいと思うけど。群雄割拠なんてあぶなくてさあ。私は帝国って好きなんよ、ほんとは。むふふ。


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