書評    Almost Monthly Book Review
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■2002年6〜8月に読んだ本から

ミルトン&ローズ・フリードマン・西山千明訳
『選択の自由----自立社会への挑戦』
日本経済新聞社 2002.6 \1238


一九八〇年に出た名著の訳のリバイバルだ。内容は、出版当時よりも現在の方がはるかに説得力を発揮するんじゃないかな。ズバリ「過剰統治社会の病気」に対する処方箋満載の本。いろんな具体的な提案があって、単なる総論とか理論の本じゃない。「ガモンの法則」というのがあるそうだ。「どんな組織であろうが、それが官僚化すればするほど、より広範に優れた仕事が劣った仕事によって置き換えられるようになる」という法則。国民に奉仕するという善意と大義のために、政府は役人を増やすが、増えた役人は国民のためではなく、自分たちの支配力と決定権を保持するために、不必要な規制を増やす。国民の自由な選択権と活力は奪われ、税金は浪費される。そのツケは、役人ではなく国民が払うわけ。

日本人は、だいたいが「納税者意識」が薄い。これだけ払っているんだから、払った額にみあった仕事しろよって役所を監視するっていうより、面倒なことがあれば行政の責任にして、何でもかんでも行政にやってもらおうとするけれども、税金はいっさい払いたくないっていう人種が多い。日本人で、税金払っていなくて、やらずぶったくりで人の払った税金の恩恵ばかりを手にしている人間の数って結構多いのではないか。払った税金に見合ったサーヴィスを受けるのは市民の権利であり、公共サーヴィス受けたいなら税金を払うか、払った実績があること!という当然の認識が、日本にないのは、なぜだろうか。

このさい、公務員の子どもに生まれて、全部公立や国立の教育を受けて、就いた仕事は公務員で、延々と無為に長生きして年金ばかりをやたら長年稼ぐという生き方は、何となくカッコ悪いみたいだ、という美意識を日本に広めないとなあ。ほんと、そういう奴に限って、呆けつつ長々と図々しく生きるんだよなあ・・・で、安い安い受講料で私の勤務先みたいに庶民的な中堅私立大学の社会人聴講生やって、高い授業料払っている現役の学生の邪魔するんだ・・・やだ、やだ。


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