書評    Almost Monthly Book Review
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■2002年6〜8月に読んだ本から

副島隆彦、山口宏
『新版・法律学の正体』』
洋泉社 2002.7 \1800


一九九一年に出て、九五年に出て、また復活した名著にして快著。「法律学」という、いかにも厳正中立で科学的に見える学問のいい加減さを、民法、憲法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法、税法の各分野から検証している。法律家やその卵以外の一般読者にも理解できるよう記述は明晰である。対談形式なので、高度な内容のわりには読みやすい。驚いた。法律というのは状況に応じて恣意的に解釈され運用されてきたらしい。「法解釈学は、徹頭徹尾、技術学」であるので「世界について何も語ろうとしない」し、「正義とエクイティ衡平の術は法解釈学の内部にはない」そうだ。小賢しくなっても聡明にはなれない学問らしい。しかも、大方の法律家は、そのことに無自覚だそうだ。

だろうなあ・・・実は、自然科学でさえ、恣意的なものらしいよ。実験したって、観察し分析する人間の偏差がどうしても入り込むから、なかなか厳正中立とはいかないらしい。実は、人間のやることなんて、みんな「ブンガク」なのかもしれないよ。私が今まで会った最も頭の悪い人間のひとりは法学部出身で憲法専攻という人物だったが、そいつは法律の恣意性なんてものに少しも気がつかず、他の人文系学問分野を馬鹿にしていた。そいつは本当に頭が硬くて悪い(あ、この本の著者たちと同じ大学の出身だったっけ)から、こういう自分の専門関係の本も読まないのだろうなあ・・・朝日新聞とか『週間金曜日』を愛読しているのかもなあ。


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