書評    Almost Monthly Book Review
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■2002年6〜8月に読んだ本から

岡田信子
『心の傷を抱きしめて』
主婦の友社 2002.6 \1600


アメリカでは子ども時代に親から受けた虐待(女児の場合は実父や継父から受ける性的虐待)を描いた小説や自伝が一九八〇年代から目立って出版されてきた。トラウマから回復する症例研究も蓄積されてきている。本書はその日本版。著者は誰にも語ることのできなかった、著者自身が直視できなかった体験を、七十歳を過ぎてやっと書いた。かつての自分と同じ苦しみを背負う子どもたちのために書いた。著者は実父の暴力と擬似強姦行為にさらされた。母親は弟たちの世話にかまけ娘の窮状に無知だった(のかなあ?見て見ぬふりしていたのではないの?息子ばかりに執着し関心を払うというのは、日本の普通の女の貧乏臭い性癖だ)。その傷から立ち直った軌跡を振り返り言語化するのに六十年近くの年月が必要だった。それでも著者は生き、充実した人生を素直に信じ求め作り上げた。人間は強い。不幸より強い。

なんで、こういう本を中学校や高校では読書感想文の課題図書にしないのですかね?しょうもない小説とか児童文学なんて、読んでも生きていくのに役に立つ情報にもならないのにねえ。この世の中には、こういう人間もいる、こういう親もいるから、あなたの人生の害になるような親など、はっきり捨てていいし、家族など解散してもいいのだ、宿命でも運命でもない!ということをガキに知らしめるような本ではなくて、いまだに『走れメロス』に『舞姫』に『こころ』ですよ。わけがわかりません。国費で留学して女を騙す話をやたら気取ってロマンチックに意味ありげに書いただけの小説なんか、何か意味があるわけ??せめて、トルーマン・カポーティの『冷血』ぐらい読ませろ。ホイホイ気軽に海外に出て、たかられたり、騙されたり、殺されたりするマヌケな日本人が、少しは減るだろう。


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